ゴッホの人生 3
ゴッホの死んだ兄の墓は、牧師館に近い教会のそばにありました。
鋭い感受性を持った少年にとって、墓石のうえに、自分と同じ名前が刻まれていることは、深い印象を与えずにはおくまいと思われます。
それは、人生の入り口においてすでに、身近なものとしての死を彼に示したでしょう。
或る批評家が言うように、この兄が自分と同じ名前であるために、自分をその兄の身がわりにすぎぬと思うにいたったということも、充分にありえることです。
ゴッホが生涯を通じて、あのように執拗におのれの存在理由を問い続けたということには、こうした事情がかげを落しているかも知れないのです。
このようなゴッホにとってのよろこびは、自然との結びつきであり、彼は、かぶと虫を追いまわしてりっぱなコレクションを作ったり、魚釣りや鳥の巣探しを楽しんでいたようです。
父の教会は、村の人口の2パーセントにも足らぬ信者数に比例してごくごく小さなもので、アカシアやけやきなどに囲まれてひっそりと立っており、林をぬけると、ヒースのはえた野や麦畑が続いていました。
こういう林や野が、幼いゴッホの遊び場だったのでしょう。